台本/終末ドライブ(不問2)

〇作品概要説明

主要人物2人。ト書き含めて約6000字(20分)

世界終末の日、親友とドライブにいこう。真実なんてどうでもいいさ


〇登場人物

ハル:性別不問。運転する方。

アキ:性別不問。泣き演技あり。

夏希:アキが兼ね役。


利用前に注意事項の確認をよろしくお願いいたします。

https://natume552.amebaownd.com/pages/6056494/menu

作者:七枝



0:本文ここから。Mはモノローグ。口調変更自由。

0:SE無線の音。


アキ:やっちまった。

ハル:(M)チャンスだ、と思った。

アキ:なぁ、ハルどうしよう。どうしたらいい。このままじゃ、

ハル:(M)千載一遇のチャンスが、ようやく回ってきたんだと。

アキ:……ひとりはいやだ

ハル:(M)もしかしたら、を願ってトランシーバーを握りしめた。

アキ:たのむよ、一緒にしんでくれ。

ハル:……わかった。迎えにいくよ、アキ。

ハル:(M)キーをつかみ、車内にすべりこむ。残り少ないガソリンを吸って、車がきゅるきゅると鳴いた。


0:アキの自宅前で、ハルの車が止まる。アキは血まみれである。


ハル:乗って。

アキ:……車で来たのか

ハル:おう。

アキ:ガソリン、まだ残ってたんだな。

ハル:ガレージに隠しておいたんだ。案外みんな探さない。

アキ:そりゃあのおんぼろガレージに貴重なガソリンがあると思わない。

ハル:そのとおり。


0:アキ、助手席に乗り込む。


ハル:あ、シートベルトしてよ。

アキ:本気で言ってるのか?

ハル:いつだって本気さ。警察につかまりたくないだろう?

アキ:いないものを気にしてどうする。

ハル:いいから。

アキ:(舌打ち)


0:アキ、ベルトに手をかけたところで、血まみれの自分の手に気づく。


アキ:あ……悪い、血まみれだったわ。

ハル:今きづいたの?いいよ、べつに。

アキ:シートが。

ハル:どうせ今日限りの命さ。

アキ:洒落にならん。

ハル:洒落じゃないからね。

アキ:…………

ハル:あーき?ベルトして。

アキ:わかった。

ハル:よし、発進しまーす。


0:車が静かに発進する。車内に少しの沈黙。


アキ:……どこに行くんだ。

ハル:んー?どうしよ。こういう時の定番といえば海?

アキ:はぁ。

ハル:そんでもって、崖の上でトレンチコート羽織って、お話する。

アキ:火サス?

ハル:そうそう、一回やってみたかったんだよね、火サスごっこ。

アキ:怖くね?

ハル:アキ、高所恐怖症だっけ?

アキ:や、違うけど……

ハル:海、やめようか。山にする?

アキ:山ねぇ……

ハル:山も嫌か。

アキ:知らないのか?

ハル:ん?

アキ:ちょっと前に噂で聞いたんだ。最近山で流行ってるって。

ハル:なにが。

アキ:……集団自殺。

ハル:ああ。

アキ:アレが降ってくる前に、地球に還るだとかなんとか。

ハル:天使がどうたらとかいう新興宗教だっけ。ネットがあった頃、Xで流行ってた。

アキ:だから今山道走れば、ごろごろ死体に接触するんじゃないか。

ハル:……山、やめようか。

アキ:ん。

ハル:……それじゃ、どこいこーかなー……

アキ:……どこでもいい。

ハル:希望とかないの。どこでもいけるよ。

アキ:……どこ行ったって、逃げられない

ハル:逃げたいんだ?

アキ:……

ハル:見納めたいものは?野球場とか、ホームセンターとか。

アキ:どういうチョイス?

ハル:君らの休日、だいたいそんな感じだったって聞いたけど。

アキ:……っ!

ハル:あ、ごめん。無神経だった?

アキ:……誰の血か、わかってた?

ハル:そりゃ、ねぇ……

0:気まずい沈黙。

ハル:昨日さ、ふたりで集まって飲み納めしただろ。

アキ:ああ。

ハル:その時、のろけてたよ。へらへら笑ってさ。

アキ:おぼえてない。

ハル:だいぶ飲んでたから。

アキ:……そうだな。

ハル:「世界終末の日に、自分は恋人と心中するんだ。だから明日は心中記念日だ」って。楽しそうにさ。羨ましかった。

アキ:だいぶ酷いこと言ってんな。

ハル:まあね。こちとら寂しい独り身だっていうのに。

アキ:……悪かった。

ハル:いいよ。いつものことだ。君に細やかな気遣いは期待してない。

アキ:…………

ハル:あれ?なに落ち込んでんの。

アキ:……気遣いが、たりなかったのか。

ハル:…………

アキ:気遣いが足りなかったから、夏希は……

ハル:浮気でもされた?

アキ:…………

ハル:カッとなって、心中前に殺しちゃったんだ?

アキ:……なつき、どうして……

ハル:どういう状況だったの。

アキ:……隠れ家に帰ったら、夏希が、知らない奴と二人で……

ハル:真っ最中だった?

アキ:ハル!

ハル:ごめんって。

アキ:……服は、脱いでなかった。

ハル:ほう。

アキ:けど、あれは……そういうことだろ。じゃなきゃどうして家に入れるんだよ、ありえないだろ。こんな日に!どうして!

ハル:……ふーん

アキ:夏希、どうして……なぜなんだ……

ハル:……手、拭きなよ。ダッシュボードにウェットティッシュいれてある。

アキ:あ……

ハル:顔もね。真っ赤だよ。


0:アキ、サンバイザーの鏡で自分の顔を確認する。返り血が顔までべったりついている。


アキ:不審者じゃないか……

ハル:(笑う)

アキ:お前、よく乗せたな

ハル:そりゃ乗せるでしょ

アキ:危機感が足りない。

ハル:今の君に言われてもなぁ

アキ:くそっ、乾いてなかなか取れない

ハル:血の汚れってしつこいんだよね

アキ:鼻毛までこびりついてる。

ハル:抜いたら?

アキ:どこに捨てるんだよ

ハル:床に適当に放り投げればいいよ

アキ:前、泥つけて入ったら激怒したじゃないか

ハル:愛車だもの

アキ:もういいのか。

ハル:今日で終わりだからね

アキ:おわり……

ハル:そう、終わり。

アキ:……ハルは、怖くないのか。

ハル:んー……そうだな、前はこわかった。

アキ:今は?

ハル:今はちょっと、興奮してる。

アキ:はぁ?

ハル:なんていうのかな、雷がおちてくるのを待ってる気分というか。

アキ:お前雷苦手だろ。

ハル:いつの話だよ。

アキ:保育園の時……

ハル:よく覚えてるなぁ

アキ:毎回かくまってやった恩を忘れたのか

ハル:おぼえてる、おぼえてるよ。えーっとじゃあ、初雪をまつ気分みたいな?

アキ:そんな可愛いもんかよ。

ハル:ただの自然現象のひとつってこと。

アキ:その自然現象で、みんな死ぬ。

ハル:そう、みんな平等に死ぬ。自然は差別なんてしない。

アキ:……………

ハル:想像してみて。これから6時間か……9時間後ぐらい。夜空がぱっと輝いて、大きな火球が落ちてくる。何も知らなければ、夜を飛び越して昼がやってきたのか思うかもしれないね。きっと、それは今まで見たことのないほど美しい光景だよ。

アキ:だから?

ハル:死ぬ前にみる情景として、なかなかいい部類だろ。

アキ:その後死ぬってのに?

ハル:しょうがない。

アキ:いやだ。

ハル:そう言ったってどうしようもない。

アキ:嫌なもんは嫌だ!

ハル:アキ。

アキ:いやだ!しにたくない!もっと生きたい!どうしてだ夏希!どうしてこんな目に!どうして!

ハル:…………

アキ:いやだ、もういやだ。ひとりでしにたくない。いやだ、こわい……

0:アキの嗚咽。だんだん泣き声が大人しくなる。

ハル:……顔、ふいたら?

アキ:(鼻をすする)

ハル:少しはすっきりした?

アキ:……ん。

ハル:ほら、夏希さんはいないけど、1人じゃないだろ?

アキ:……ああ。

ハル:幼馴染で我慢して。

アキ:……ただの幼馴染じゃない、親友だ。

ハル:(笑う)

アキ:高速のったのか。

ハル:こっちの方面だと事故少ないから、まだ通れるんだよ。

アキ:……へぇ。

ハル:なに?

アキ:下見してた?

ハル:あはっ、気づいた?実は最期の場所、決めててさ。

アキ:……そっか。

ハル:付き合ってくれる?

アキ:どこでもいい。ひとりじゃないなら。

ハル:よかった。

0:アキ、鼻をすする。

ハル:めっちゃ泣いてたね。

アキ:泣くだろ普通。お前も泣け。

ハル:やだよ。

アキ:泣けよ。

ハル:事故ってもいいの?

アキ:…………ふん。

ハル:……アキさぁ、童貞じゃないよね?

アキ:は?

ハル:殺人童貞。

アキ:……その言葉、嫌いだ。

ハル:そういえば夏希さん、言葉遣い気にする人だったね。

アキ:夏希の話はいいだろ。

ハル:ははは。

アキ:……殺したことは、ある。夏希がはじめてじゃない。

ハル:だよね。

アキ:みんなそんなもんだろ。

ハル:そりゃそうだ。優しい人から死んでいく。

アキ:生きるためだ。仕方なかった。

ハル:ここ5、6ヶ月は落ち着いてたね。

アキ:派手な奴も、さっさと死んだ。

ハル:残ったのは小賢しいやつと臆病者だけ。

アキ:お前はどっちだ?

ハル:どっちだと思う?ちなみにアキは臆病者の方ね。

アキ:……わかってる!

ハル:ごめんごめん。

アキ:お前はいつも一言多い。

ハル:つい言いたくなるんだよね、言わない方がいいってわかってるのに。

アキ:ホントはハルも怖いんじゃないか。だからべらべら喋ってる。

ハル:うーん、どうかな。

アキ:なんだよ、その返事。

ハル:ふふ。

アキ:……楽しそうだ。

ハル:君といっしょだからね。

アキ:……夏希、殺した後にな。

ハル:うん。

アキ:悲しい、より先に「これでひとりぼっちだ」と思ったんだよ。

ハル:後悔した?

アキ:してる。今も。

ハル:そっか。

アキ:でも裏切られたと思うと我慢できなくて。

ハル:夏希さん、良い人だったのにね。

アキ:なんか理由があったのかもしれない。

ハル:うん。

アキ:ハルは……こんなことにならなきゃ一人だったんだよな

ハル:うーん。

アキ:お前、つよいよ。他のヤツとちがう。

ハル:そんなことないよ。

アキ:ある。

ハル:ないって。

アキ:さっき残ったやつは小賢しいやつと臆病なやつって言ったよな。

ハル:言ったね。

アキ:辛抱強くて友達想いなやつ、も追加してくれ。

ハル:ふふふ。褒めるね。

アキ:言い残したことがないようにしないと。

ハル:なるほど。

アキ:ハルはないのか。言い残したこと。

ハル:言っていいの?

アキ:多少の文句なら我慢する。

ハル:多少なんだ。

アキ:口には気をつけろよ、殺人鬼の前だぞ。

ハル:こっわ~

アキ:……嘘。何言ったってゆるすよ、お前なら。

ハル:……そう。

アキ:ああ。

ハル:じゃあ、言わせてもらおうかな、……ずっと君の事が好きだった。

アキ:……それ、は、恋愛的な意味で?

ハル:恋愛的な意味で。

アキ:……おどろいた。

ハル:だろうね。

アキ:まったく気づかなかった。

ハル:きみ、鈍いもんね。夏希さんも。

アキ:ぐっ……

ハル:似たものカップルで、ぴったりだったよ。両方から恋愛相談持ち掛けられるのには参ったけど。

アキ:はぁ!?聞いてないぞ!

ハル:言うわけないでしょ。相談対象きみなんだから。

アキ:そ、そうか。そりゃそうだな……

ハル:うん。

アキ:……まて、ならお前知ってたのか?

ハル:なに?

アキ:夏希が浮気してたって知ってたのか!?

ハル:知らないよ。

アキ:そ、そうか……

ハル:うん。知らない、というかそんな事実ないと思う。

アキ:事実が、ない……?

ハル:そろそろ高速おりるね。トイレ大丈夫そ?

アキ:あ、ああ……いやまてまてまて。

ハル:え?

アキ:え、じゃないよ。「え」じゃ。そんな事実ないってどういうことだよ!

ハル:……きみがさぁ、落ち込むと思って言わなかったんだけどさ。

アキ:何か知ってるなら、さっさと言え!

ハル:夏希さんと一緒にいた人に、心あたりあるんだよね。

アキ:は……?

ハル:オレンジのシャツに、白いスーツの人でしょ。でっかいオパールのピアスつけてる。

アキ:オパールの、ピアス……

ハル:あとは……そうそう、腰に護身用のナイフさしてたはずだよ。みた?

アキ:見た……

ハル:その人、医者。精神科医。

アキ:い、医者がなんで……

ハル:夏希さんに相談されてね、アキがいよいよ限界っぽいって。それで紹介したの。なかなか連絡とれなくって、ギリギリのタイミングになっちゃった。

アキ:ならお前も一緒にいれば……!

ハル:医者紹介するぐらいで、そんな大事故引き起こると思わないでしょう?夏希さんもなんでいきなり家にあげたのかね。

アキ:じゃあ、誤解で……?そんな、そんなことって……!

0:アキ、呼吸が荒くなる。パニック状態の一歩手前。

ハル:……なんてね。

アキ:……ハル?

ハル:うそうそ。冗談だよ。夏希さんは君を裏切った卑怯なやつなんだ。君は悪くない、君はなにも間違ってないよ。

アキ:つ、作り話だっていうのか?

ハル:……アキは、どっちの方が救われる?

アキ:さ、さっき特徴だってあげて……!

ハル:たまたますれちがった人の、それっぽい特徴を言っただけ、とかは?生き残りも少ないご時世だしさ。

アキ:なにを、信じればいい……

ハル:アキの、信じたい方を。

アキ:……好きだってのも、嘘か。

ハル:それは、本当。

アキ:そうか……


0:車窓から海の景色。


ハル:みて、海がみえてきたよ。

アキ:…………

ハル:きこえてる?

アキ:結局、海にしたんだな。

ハル:ここで世界を割る星をみようよ。

アキ:……(ためいき)

ハル:アキ?

アキ:……もし、世界が終わらなかったら、ハルは告白しなかったか?

ハル:……そうだね、君と夏希さんが結婚して……友人代表インタビューでもして、素知らぬ顔で独身貴族を謳歌してただろうね。もしくは、やることなくてネトゲでもしてたかも。

アキ:……そうか……

ハル:知りたくなかった?

アキ:お前の告白を聞いたせいで、色々考えてしまうんだ。あの時言ったあの台詞や……行動の真意を。

ハル:……

アキ:頭が、ぐちゃぐちゃだ……

ハル:……もう少し、ドライブを続けようか。

アキ:…………

ハル:アキ、喉かわいてない?

アキ:え?

ハル:後ろの座席に水置いてるからさ、飲んでいいよ。

アキ:……飲みかけじゃないか。

ハル:イマドキ新品の水なんて置いてるはずないだろ。

アキ:……まあ。

ハル:それ飲んで、少し落ち着きなよ。飲まず食わずだったんだろ?

アキ:………

ハル:信用できない?

アキ:そんなこと……!

ハル:まあ、アキの好きに(すればいい)


0:アキ、勢いよく飲み干す。


アキ:どうだ!飲んだぞ!

ハル:……っぷ。はははっ、すごい飲みっぷり!さすがアキ。

アキ:だろ?


0:二人、目を合わせぎこちなく微笑む。少しの間。


アキ:……ハルを、疑ってるわけじゃないんだ。

ハル:うん。

アキ:ただ……こわくてたまらない。

ハル:なにが?

アキ:……すべてが。世界も、常識も、自分も……死に慣れすぎちまった

ハル:ああ……

アキ:あんなに簡単に、夏希を殺せるとは思わなかった

ハル:うん

アキ:たとえば、もし、万が一、今日地球が終わらなかったとして、

ハル:終わるけどね。

アキ:もしもの話。

ハル:わかってる。

アキ:もしも隕石が降ってこなかったとして……元の世界に、適応できると思うか?

ハル:…………

アキ:争いのない世界に。食料の心配のない世界に。人を殺しちゃいけない世界に……戻れんのかな。

ハル:……無理かもしれないね。

アキ:…………

ハル:一度人を殺してしまったら、殺すという選択肢をとることを覚えたら、その前には戻れない。この世界は、人殺しに慣れ過ぎた。

アキ:……最後にひとつだけ、聞かせてくれ。

ハル:なあに?

アキ:ハルは、夏希が嫌いだったのか?

ハル:まさか!君の恋人を嫌うわけないだろ。

アキ:……そっか。

ハル:うん。

アキ:……なら、いい

0:アキ、穏やかに眠る。


0:少し間をあけて。


ハル:……アキ、寝た?……寝たみたいだね。

ハル:…好きも、嫌いも意味がないよ。世界はもう終わるんだから。未来なんてない。希望もない。ただ、君と二人ここにいる。それだけがすべてで、それ以外はすべて嘘だ。


0:ハルの回想。夏希役はアキがやってください。

0:SE無線の音。


夏希:ハルさん、少しよろしいですか?

ハル:(M)チャンスだ、と思った。

夏希:最近アキが限界みたいで、どうしたら……

ハル:(M)千載一遇のチャンスが、ようやく回ってきたんだと。

夏希:医者を?それは有難いですけど、いきなり家に呼ぶなんて……

ハル:(M)もしかしたら、を願って声をかけた。

夏希:わかりました。ハルさんからもよろしくお願いしますね。

ハル:(M)不安げなあのこの声を思い出す。夏希さんは、アキそっくりに素直で、信じやすく……そして、馬鹿な子だった。


0:回想おわり。ハル、車を路肩にとめ、アキの冷たい頬に口づける。空は夕焼け。


ハル:ああ、いい景色だ。……でも、なんでだろう。ちょっと寂しいね、アキ。


0:終わり。

0:補填①ハルは信用ならない語り手である

0:補填②ハルが本当に「医者」を手配したかどうかは彼しか知らない。



七枝の。

声劇台本おいてます。 台本をご利用の際は、注意事項の確認をお願いします。

0コメント

  • 1000 / 1000