作品概要説明
主要人物4人。約7000字。こちらハロウィンモンスターシナリオ企画、略してハロモン企画参加作品です。上演の際は、「#ハロモンシナリオ上演」とハッシュタグをつけていただければ幸いです。
ハロウィンの夜、都市伝説の検証をしにユーチューバー姉妹が廃神社に行って鬼に食べられちゃう話。姉は生き残ります。叫んでもいいですが、叫ばなくてもできるホラー。
〇登場人物
速水:はやみ。男。途中まで彼の声は以下3名に聞こえていない。人外。鬼いちゃん。
瀬川:せがわ。男。気が弱い。カメラ+編集担当。
亜里沙:ありさ。姉。気が強い。弱小ユーチューバー。
優香:ゆうか。妹。姉妹ユーチューバーの片割れ。
〇ご利用前に注意事項の確認をよろしくお願いいたします。
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作者:七枝
本文
〇深夜。田舎町を徘徊する3人+αの男女。
〇この時点では瀬川、亜里沙、優香に速水の声は聞こえていない。
優香:ねぇ、本当にやるの?
亜里沙:今更なに言ってんの、早く歩いてよ
瀬川:ま、まってください亜里沙さん。機材重くて……
速水:そんなこと言って、ホントは怖いだけじゃねーの?
亜里沙:だらしないわね。
優香:大丈夫?私、なにか持とうか?
速水:いーの、いーの。こうゆうのは野郎に任せておけ。
瀬川:ありがとうございます……もう着きますから。
優香:そう?無理しないでね。
亜里沙:あ、鳥居みえてきた。
瀬川:あれが例の?
優香:なんて名前だっけ……えっと。
速水:垂間神社。(たれまじんじゃ)
亜里沙:名前なんてどうだっていいじゃん。どうせみんな廃神社ってとこしか注目しないよ。
瀬川:でも後でサムネにのせるので……
亜里沙:うるさいなぁ、編集の仕事でしょ。
優香:最初から調べていた方がスムーズじゃない?
亜里沙:はあ?私に文句つけるわけ?
優香:そういうわけじゃ……
亜里沙:とにかく始めるわよ、ここにカメラ1台セットして。
瀬川:はい。
亜里沙:優香はいつもどおりタイトルコールしてくれたらいいから。あとは台本通り企画説明して、流れでやっていく感じで。
速水:ふうん。これで動画とってるの?ゆーちゅーばーってやつ?
亜里沙:ちょっとカメラ動いてる!そこじゃ木が影になって正面に神社が映らないでしょ! 瀬川くん、ちゃんと固定して!
瀬川:ご、ごめんなさい!
亜里沙:あーあ。助っ人頼んだの失敗だったかな……
優香:今回の企画、2人じゃできないって言ったのおねえちゃんじゃない。
亜里沙:生意気。あんたは私のおまけなんだから黙ってなよ。
優香: なにそれ。
瀬川:ぼ、僕ちゃんと頑張りますから!お二人のファンですし!
速水:そうそう。俺も協力するし。な?
亜里沙:(溜息)
優香:やろ、お姉ちゃん。早く終わらせようよ。
亜里沙:足引っ張んないでよね。
優香:わかってる。
瀬川:本番はいりまーす。3,2,1
〇タイトルコール
優香:「そこにだれかいた」
〇深夜。廃神社にて。
亜里沙:それでは始まりました!姉のアリサと、
優香:妹の優香の
亜里沙:ありゆかチャンネル!今日はですね、巷で有名な都市伝説の検証ということで、地元の廃神社にきています。少し肌寒いですね~優香、大丈夫?
優香:うん。
亜里沙:ならいいけど。つらかったらいつでも言ってね。
優香:ありがとう、お姉ちゃんもね。
亜里沙:うん。あ~うちの妹はかわいいなぁ。
優香:きゃっ、いきなり抱き着かないでよ。
亜里沙:かわいい妹で暖とってるの~
優香:カメラさん困ってるよ。
亜里沙:仕方ないなぁ……あ、そうそう。いつもは固定カメラと自撮りでやってる当チャンネルですが、今回は特別に助っ人を用意してます。カメラさーん?
瀬川:あ、はい。カメラマンの瀬川です。
速水:速水でーす!
亜里沙:彼には、カメラマン役と鬼役をやってもらう予定です。ちなみに彼氏じゃないから皆安心してね?
優香:何いってるの、お姉ちゃんったら。
亜里沙:だって心配になるでしょ?優香はこんなにかわいいんだもの。
優香:もう冗談ばっかり……それはそうと鬼役って?
亜里沙:それはいまから説明しまーす。カメラさん、神社の階段上まで上がってもらえます?
瀬川:はい!
亜里沙:はやくはやく~!走って!
速水:だいぶ段差あるけど……鬼畜だねぇ、亜里沙ちゃん。
優香:じゃあいったん、こっちのカメラは切って……と。
亜里沙:優香。
優香:なあに、お姉ちゃん?
亜里沙:あんたノリ悪いよ。こっちがシスコンネタ振ったら、いったんのってくれないと。
優香:ご、ごめん。でもお姉ちゃんいつも引っ付くなって言ってるから……
亜里沙:プライベートではね?これはそういうファンもいるチャンネルなんだから、サービスしなきゃ。
優香:そういう?
亜里沙:わかんないならいいよ。とにかく言う通りにして。
優香:うん……
瀬川:(激しい息遣い)つ、つきました!
亜里沙:合図したら打ち合わせどおりお願いしまーす!
瀬川:はい!ではこっちのカメラ回しますね!
優香:…………
亜里沙:優香、ぼーっとしてないで。マイクオンにして。
優香:あ、うん。ええと……「何が始まるの?お姉ちゃん」
亜里沙:ふふん。よくぞ聞いてくれました!優香は「月曜倶楽部」って知ってる?
優香:げつようくらぶ?
亜里沙:知る人ぞ知るおまじないサイト。かわいい恋のおまじないから憎いあん畜生を地獄に陥れる呪いまで、ありとあらゆるおまじないが載ってるんだって。
優香:うさんくさ。
亜里沙:そう思うでしょ?でもこれが効くって噂なのよ。
優香:そんなの聞いたことないよ。絶対あやしい。 本当だったらもっと話題になってるはずでしょ?
亜里沙:それがこのサイト、選ばれた人しか繋げられないらしいのよね。
優香:うそぉ。
亜里沙:ほんとほんと。しかも月曜日の決められた時間、決められた区域の回線でしか繋げられないらしいの。
優香:だから月曜倶楽部?
亜里沙:そう。
優香:お姉ちゃんは選ばれたってワケ?
亜里沙:まさか。私はその月曜倶楽部につないだ人からDM貰ったの。なんでも願いが叶うおまじないを検証してほしいってタレコミでさ。
優香:信じられるの?
亜里沙:だから検証するんじゃない!「楽しい事には全力集中、当たってくだけて弾け散れ!」がありゆかチャンネルの信条でしょ?
優香:初耳だよ~!
速水:まあまあそんなしょげるなよ。楽しんでいこうぜ?せっかく来たんだからさ。
優香:(溜息)……それで?私は何させられるの?
亜里沙:「だるまさんがころんだ」
優香:ここで?階段のぼりながら?
亜里沙:そう。「ハロウィンの夜、廃墟の階段でだるまさんがころんだ」をする。すると「1歩、歩くごとに願いに近づく」それがこのおまじないの内容だよ。
優香:やだあ
速水:そう言わずに。叶えたい願いがあるんだろう?
優香:こわいよ~!
亜里沙:だいじょうぶ。お姉ちゃんが手を握っててあげるから。
優香:くすん。ゲームが始まったら手を離すんでしょう?
亜里沙:まあね。
優香:お姉ちゃんの鬼!
亜里沙:わがまま言わない。これもありゆかチャンネルのため!視聴者のみんなのため!ほら、カメラさんも待ってるでしょう?
瀬川:(くしゃみ)
亜里沙:あーあ。優香のせいで風邪ひいちゃう。
優香:うう……なにかあっても見捨てないでね……
亜里沙:もちろん。じゃあ階段前に並んで。カメラさんに合図するから。
優香:はーい……
亜里沙:カメラさーん、おねがいしまーす!
瀬川:はい。こっちは大丈夫です!
速水:ねぇ、優香ちゃん。君はなにを願うの?
優香:え?
亜里沙:優香、集中して。
優香:う、うん。
瀬川:だーるまさんがこーろんだ。
〇一同ここから、速水の声が聞こえるようになる。
優香:あっ
速水:どうしたの、優香ちゃん?
優香:今、何かが変わった……ような気が。
速水:そ?
優香:空気が重くなったみたいな……
瀬川:優香さーん、口が動いてますが……
速水:すみません!俺が話しかけちゃいました!
亜里沙:口はOKってことで!じゃないと尺がもたない。
速水:だよね~?亜里沙ちゃんも俺と話したいもんね?
亜里沙:カメラマンは黙っててくれます?
速水:辛辣!優香ちゃん、亜里沙ちゃんがつめたい!
優香:ははは……
亜里沙:優香、何か気になることでもあった?
優香:ちょっと寒気がしただけ!もう1枚着込めばよかった。
亜里沙:冬が近いとはいえ猛暑だったからね。(小声で)後がめんどうだから風邪ひかないでよ
優香:うん……
速水:優香ちゃんは寒いの苦手?
優香:得意じゃないかな
速水:なら、変えてあげる。
優香:え?
瀬川:だーるまさんが、こーろんだ
SE:蝉の声
優香:(くしゅん)
速水:はははは!優香ちゃん、動いたー!
亜里沙:無効!くしゃみは無効!
速水:え~そんな次々ルールかえていいのー?
亜里沙:私がいいって言ったらいいの!
速水:だめでしょ。それじゃ「だるまさんがころんだ」にならない。
亜里沙:なら、ひとりで「だるまさんころんだ」やれっていうの?姉妹チャンネルなのに?
瀬川:あ、あのペナルティをつけたらどうでしょうか?動いた人は1段目からやり直し、とか……
速水:おっと、女王様にみかねて鬼が妥協したぞ。
亜里沙:だれが女王様だって?
速水:おおこわい。まあ鬼が言うなら異論はないさ。
優香:じゃあ私下まで降りるね、お姉ちゃん。
亜里沙:ええ、そうして。あと見苦しいからその上着脱ぎなよ。
優香:え?
亜里沙:いくら寒がりでも真夏にダウンジャケットはやりすぎ。
優香:……あ、うん。そうだよね。
速水:今度の企画は姉妹ふたりでファッションショーとかどう?
優香:(くすりと笑う)
亜里沙:何わらってんの?
優香:速水さんって面白い人だなって……
亜里沙:あんたさぁ(溜息)
優香:えっとほら、ああいうお兄ちゃんいたらいいよねってそんな感じだから。別にへんな意味じゃなくて。
亜里沙:もういいよ。はやく階段おりて。
優香:……わかった。
瀬川:優香さん、そっちどうですかー?
優香:はい、大丈夫です。
瀬川:じゃあ次いきますね。だーるまさんが、
速水:こーろんだ。
⚪亜里沙、足が滑って1段踏み外す。
亜里沙:(転びかけて息をのむ)
速水:おっと、慌てすぎ。余裕ないなぁ
亜里沙:うるさい。
瀬川:だ、大丈夫ですか!
速水:おう!この敏腕お兄様がちゃんとキャッチしたからな。
瀬川:よかった……
優香:お姉ちゃん大丈夫?休む?
亜里沙:少し立ち眩みしただけ。だいたいどこで休むっていうのよ、こんな場所で。
瀬川:ビニールシートならありますけど ……
亜里沙:いいから。余計なお世話。
優香:そんな言い方……!
瀬川:いいですいいです。僕の事は気にしないで。
優香:ごめんね、瀬川くん。
速水:どうする?なんなら、ここで元のルールに戻る?
優香:元のルール?
速水:「だるまさんがころんだ」で動いたやつは鬼に捕まるのがルールだろ。階段より平地の方がなんぼかマシだろうし、瀬川くんのとこ行って休むか?
瀬川:ぼ、僕は歓迎します!
亜里沙:やだ!お兄と優香のふたりじゃ映えないじゃん!
速水:このイケメンつかまえていうセリフか~?
優香:「お兄」?
速水:……ん?なんだよ、じっとみて。
優香:あなたは……
速水:「あなた」?随分他人行儀な言い方するなぁ。お兄ちゃんのこと忘れちゃった?このチャンネルは亜里沙と優香と俺……3人の兄弟チャンネルだろ。
優香:そう、だっけ……
速水:今回はスペシャルゲスト兼カメラマンの瀬川くんがいるけどな!
瀬川:お世話になります!
速水:なってます、だろ。はははは。
優香:お兄……わたしの、お兄ちゃん。速水さんは、私のお兄ちゃん……
速水:嬉しいか、優香?
優香:……うん。私、ずっと前から優しいお兄ちゃんがほしかったの。
速水:お姉ちゃんより?
優香:………
速水:言えないか。なら、試してみようか。
優香:試す?
亜里沙:こそこそふたりで何話してるの?撮影中だよ。
速水:悪い悪い。じゃあ1段目まで降りよう。
瀬川:え、亜里沙さん大丈夫ですか?
亜里沙:馬鹿にしないで。
速水:だそうだ。頼むよ、瀬川君。
瀬川:はぁ……では、
瀬川:だーるまさんが、こーろんだ。
〇間。
瀬川:誰も動いていらっしゃいませんね。では次いきます。
瀬川:だーるまさんが、こーろんだ。
〇間。
瀬川:はい……いいですか?では……
優香:(かぶせて)待って!
瀬川:はい?
速水:どうした、優香?
優香:……足音がしないの。
瀬川:……そうですね?
優香:お姉ちゃんどうしてる?体調わるそう?
瀬川:………えーっと、僕に姉はいませんが。
優香:違うよ、この状況でそんなこと聞くはずないじゃない!お姉ちゃんだよ、私の後ろにいる筈でしょう?
瀬川:大丈夫ですか、優香さん?
優香:どういう意味?
瀬川:……もしかして、そういうドッキリ企画ですか?
優香:なにを言ってるの?
瀬川:……えーっと……
速水:言ってやれよ、瀬川くん。妹は混乱してるみたいだ。
瀬川:……はあ。なんかすみません。いい反応できなくて。
速水:(ふくみわらい)
優香:なんなの?はっきり言って!
速水:優香、後ろふりむいてみろよ。
瀬川:優香さんに、お姉さんなんていらっしゃらないでしょう?
優香:え……
〇優香、鬼がみている前でふりむくがそこには何もいない。
優香:やだ……なんで?お姉ちゃん?お姉ちゃん、どこ行ったの?
瀬川:あー……少し休憩いれますか?
速水:そうだな、悪いけど境内の自販機で水買ってきてくれる?
瀬川:はい。
〇瀬川退場。
優香:嘘。嘘嘘嘘。つまんない。ねぇ、この冗談つまんないよ。お姉ちゃん!お姉ちゃんどこ?お兄ちゃん、お姉ちゃんどこ行ったの?
速水:いないよ。
優香:そんなわけない。さっきまでそこにいたじゃない。
速水:だれが?
優香:だからお姉ちゃんだって……
速水:名前は?
優香:な、まえ……?そんなの……あれ?
速水:優香にお姉ちゃんなんて、いらないだろ?
優香:そんな、こと……
速水:お姉ちゃんなんか消えちゃえって、優香が望んだだろう?
優香:望んでない!
速水:嘘。
優香:嘘じゃない!
速水:嘘だよ。優香は望んでた。意地悪で冷たいお姉ちゃんなんていらないって、そう思ってた。
優香:違う、違うよ!お姉ちゃんかえしてよ!お兄ちゃんなんていらない!お姉ちゃんをかえして!
速水:それが望み?
優香:そうだよ。
速水:せっかくここまで来たのに?
優香:知らないよ、そんなの!私こんなこと望んでない。もうやだ、帰りたい。
速水:そうか。なら仕方ないな……瀬川くんいないし、俺が鬼をやろうか。
優香:えっ……
速水:だーるまさんが、こーろんだ。
亜里沙:優香。
優香:お姉ちゃん!
速水:はははは!優香、また動いた。
〇優香、再度振り向くが亜里沙の姿はない。
優香:なんで……?どうして?さっきお姉ちゃんの声がしたのに。
速水:優香が動いたからだろう?
優香:でも……さっきだって動いても叶ったのに。
速水:さっき?
優香:お姉ちゃんが消えて、お兄ちゃんができて、夏になって……それで、
速水:それで?
優香:……………
速水:黙るなよ優香、寂しいだろ。
優香:……あなた、だれ?
速水:…………
優香:ここに来た時、私とお姉ちゃんと瀬川くんしかいなかった。……あなたなんてしらない。だれ?どこからきたの?
速水:……ははっ。
優香:……やだ。やめて、こっちにこないで。
速水:だめだ。もう鬼は変わったんだ。ルールは変わったんだよ。
優香:なに?なんのこといってるの?やだ、近づかないで!
速水:いやだなぁ、さっき言ってたじゃないか。
優香:知らない!やめて、やだ!
速水:おにいちゃんだよ、優香。
〇長めの間。神社の階段前には、亜里沙と瀬川しかいない。
瀬川:(荒い息)すいませーん、遅くなりました!
亜里沙:おそすぎ。めっちゃ蚊に刺された。
瀬川:すみません!これ頼まれた水です!
亜里沙:ありがと。(水をのむ)
瀬川:境内はだいたい撮影できたと思いますが、次どうします?あれやっちゃいますか?
亜里沙:あれ?
瀬川:月曜倶楽部の都市伝説。
亜里沙:だるまさんがころんだ?するわけないじゃん、2人しかいないのに。
瀬川:で、ですよねー
亜里沙:だいたいアレ、失敗すると呪われるって書いてあったし。あんたとやってもね~盛り上がらないし、リスクしかないよ。
瀬川:のろわれる?そりゃ物騒な。
亜里沙:なんだっけ?「鬼につかまると、食べられる」だったかな。
瀬川:はぁ……鬼役も参加者がするんですよね?カニバリズムですか?
亜里沙:蟹?カニがどうかしたの?
瀬川:……えーっと、ハロウィンにカップルで廃墟をまわるってのも、いいネタだと思います!
亜里沙:今なんかごまかした?
瀬川:へへへ。
亜里沙:あと誰がカップルだ。
瀬川:すいません。
亜里沙:ま、遅くまで付き合ってもらったし……この後1杯くらいは付き合ってあげてもいいけど?
瀬川:本当ですか!
亜里沙:終電で帰るからね。
瀬川:わかってますって。
亜里沙:じゃあカメラ片付けて……あれ?
瀬川:どうしました?
亜里沙:この上着、あんたの?
瀬川:違います。それ女性ものでしょ?
亜里沙:ふーん……
瀬川:持って帰るんですか?
亜里沙:ん。まだ使えそうだし、交番に届けようかな。
瀬川:へぇ、亜里沙さんにしては珍しい。
亜里沙:なんか見捨てられなくて。……なんでだろうね。
瀬川:明日は槍が降るかもしれません。
亜里沙:うるさいなぁ。
瀬川:さて、では帰りましょうか。もう用はないですし。
亜里沙:そう……だね。
瀬川:亜里沙さん?
亜里沙:ううん、なんでもない。そうね、帰りましょう。
〇おしまい。
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